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海鳴り
第6章 海鳴り
意識がはっきりとそれを自覚するまで、律子は夢の中にいる感覚だった。
頬に触れた手が柔らかく唇に触れ、親指がゆっくりと唇をなぞった。


「………」


肩に回された腕が律子を引き寄せ、頬に熱い息がかかる。

首筋に下りてきた手と、頬や唇に何度も軽く押し当てられる柔らかな唇に、律子はハッとして躰をピクリとさせた。


「…っ…」


薄明かりの中に相沢の目があった。


「…っ…、や、やめ……っッ…」


熱い唇が律子の口を塞いだ。


「…ぅ…」


背中を反らせ、逃げようともがいても、躰には力が戻ってきてはいなかった。


いけない…
いけない…


塞がれた唇に熱い舌が這い回り、吸われ、また這い回る。

パジャマの裾から背中に回った手が律子を強く抱き締めた。


「──…っ…」


熱い

熱い

熱い…


苦しい…


唇が首筋に下りてきてようやく息をした律子は、背中を這い回る相沢の手と胸元に下りてくる唇に怯えた。


「や、やめて…、やめてやめて、…いや、いや…」


相沢の熱い視線が律子を襲う。

唇を奪われると思って身構えた時、相沢の声がした。


『──…あんたが……、あんたが好きだ……律子、律子……律子……律子…──』

「…っ…──」


もう何も、考えられない。

唇が、奪われた。




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