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桜 ~あなたに見られたくて~
第10章 残された二人

「いつまでも手を繋がないでよ!」

喫茶店を出た私は
腕を振って近江の腕を振りほどきました。

「そんなに僕が嫌いなんですか?」

「好きとか嫌いとか、そんなんじゃないの!
私を口説くんなら
エッチが目的みたいに攻めてこないで」

「だって、それを目的で声をかけたんだけど」

バカ正直というか
女の扱いに慣れていないというか
つくづく私はこの男から興味が失せました。

「あんたさあ、女にモテないでしょ?」

「えっ?どうしてわかるの?」

こいつ、ホントにバカだわ
そう思うと可笑しくなってきました。

「じゃあさあ…エッチ抜きでいいから」

じゃあって何よ!
ほんとに口説くのが下手よね

「バイバイ、私、あんたと付き合う気はないから」

私は近江を置き去りにして
前を向いて歩き出しました。

「そりゃないよ!
せっかくこうして知り合えたのに」

近江は、まるで金魚の糞のように
私にくっついてきます。

「付いてこないでよ!私は買い物にいくんだから」

「付いていく訳じゃないさ
僕もたまたまこっちへ歩きたいだけだから」

屁理屈を言いながら
私の後を付かず離れず近江は歩いてきます。
まるでお嬢様が執事を連れて闊歩するようです。

5分…10分…
ついに私は根負けしました。

「わかったわよ!
抱かれてあげるわ!
その代わり…逝かせてくれなきゃ怒るからね」

そう言うと彼は満面の笑みで私の腰を抱くと
足取りも軽くホテルを目指しました。


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