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桜 ~あなたに見られたくて~
第5章 男の部屋
「そんなことよりさ、お腹減っていない?」
掃除に夢中で二人ともお昼抜きで動き回ったので
お腹がグウグウいっている。
「そうだな…牛丼でいいか?」
「お金の心配はしないで
今夜は私が奢ってあげるから」
とは言うものの
私だって給料日まで、あともう少しなので
お財布には余裕がない。
奢ると啖呵を切ったものの
二人して回転寿司で安く仕上げた。
せめてもの贅沢でビールを分けて飲んだ。
空腹にビールを流し込んだものだから
思った以上に酔いが回る。
「ねえ、気候もいいし
少しだけ遠回りして帰ろ」
光俊の家を訪問する時に
近所に公園があったのを思い出しました。
「夜の公園か~、俺、狼になっちゃうかもよ」
「まあ!貧相な狼ですこと」
そんな冗談を言いましたが
出来ることなら狼になってもらいたい…
私はふしだらにもそんなことを考えていました。
確かこっちにベンチがあったから休もうぜ
光俊はここに草花の撮影に何度か訪れているので
すたすたと先を歩いて行きます。
日はとっくに落ちて
街灯のない公園は真っ暗です。
突然、光俊が歩みを止めました。
「どうしたの?」
「どうやら先客がいるようだ」
目をこらしてみると
確かにベンチに二人が座っています
「カップルかしら?」
寄り添う人影は
どう見てもカップルそのものでした。