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桜 ~あなたに見られたくて~
第6章 図書館にて

陽菜のセックスライフは充実していた。

ただひとつ気がかりなのは
光俊が定職にもつかずに
いつまでもバイト生活で
思うようにデートも出来ないことだった。

「陽菜が露出して
俺がカメラマンを引き受けてやるよ」

そう言って陽菜を口説いて付き合い始めたのに
未だに露出撮影もままならず
それだけではなく
デートさえ「今、持ち合わせがないんだ」と
いつも薄暗い下宿のアパートで
隣の男を挑発するようなセックスしか
してもらえない。

この日もそうだった。

光俊の体が忘れられなくなっていた私は
抱いてもらおうと彼の部屋を訪ねた。

私が部屋の扉を開ける前に
光俊が飛び出してきて
「悪い陽菜!
俺、急にバイトの予定が出来ちまった」
そう言って「今晩、何か旨いものでも作っておいてくれ」と捨てゼリフを残して
陽菜を置き去りにして飛んでいってしまった。

『何よ!
今日は何も予定がないって言ってたクセに!』

腹立たしかったけど
それでも私は
好きな男が喜びそうな料理を作るために
スーパーへ買い物に行こうと一人で部屋を出た。

戸締まりをしていると
タイミングよくお隣の部屋の扉が開いて
若い男の子が部屋から出てきた。

無視するわけにもゆかずに
私は『こんにちは』の意味を込めて
軽く会釈した。

若い男の子はギクッ!と驚いたが
律儀に会釈を返してきた。

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