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桜 ~あなたに見られたくて~
第6章 図書館にて

「あの…いつもこちらへ来ているの?
高校生?」

私の問いかけに彼は苦笑いしながら答える。

「今、大学生なんです」

「…え?!」

「…そうは見えませんか?」

「いえ、大学生にしては幼い顔立ちだなあって…
ねえ、付き合っている彼女いる?」

聞くべきか迷ったけど、
せっかく仲良くなれそうなので
ここでスルーするのも
逆に不自然だと思ったんです。

「彼女は…いません…」

「図書館で勉強する方が落ち着く?」

矢継ぎ早に私が質問するものだから
彼ったらパタンと本を閉じて
「静かにしてもらえませんか?
ここは図書館なんですよ」と
これ以上の会話は無用だとばかりに
心に壁を作ってしまいました。

まあ、確かに図書館だから
静かにしないといけないんだろうけど
彼の態度にカチンときちゃいました。

「君さあ…私のアレしてるときの声を
いつも聞いてるよね?」

そう訊ねると
彼はギロっと私を睨み
「聞きたくなくても聞こえるんだから…
仕方ないでしょ!」と
やや、膨れっ面で答えて帰り支度を始めました。

「あ、ごめんなさい、
そんなつもりで聞いたんじゃないの」

まだ帰らないでと
私は彼の手を思わず握ってしまいました。

途端に彼の顔が真っ赤になったんです。
『可愛い…』
私は無性に彼にちょっかいを出したくなりました。

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