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桜 ~あなたに見られたくて~
第9章 母 陽子
時間が勿体ない、行きましょう
綾辻はそう言うと
母の陽子の手をとって立ち上がった。
「陽菜さん、少し陽子さんをお借りしますよ」
そう言うと綾辻は母の腰を抱いて
私たちを残して店を出ていった。
「あの二人…恋に落ちちゃったんですかね?」
取り残されて気まずくなった近江は
苦笑しながら母が座っていた席に移ってきた。
ベンチシートなのをいいことに
近江は私に密着するように体を寄せてきた。
「やっぱり僕では役不足ですか?」
「い、いえ…そんな…別に…」
「無理しなくてもいいんですよ
陽菜さんが綾辻を気に入っていたのは
彼を見つめる目で察しがつきましたから」
「いえ…別に…
ホントにそんなんじゃないですから」
「そうですか?
じゃあ、僕とこの後デートしてくれます?」
「いえ…私…買い物の途中ですし…」
私は堪えがたくなって、席を立とうとしました。
「まあまあ、お母さんも綾辻と楽しむみたいだし
陽菜さんは僕と楽しみましょうよ」
逃がさないよとばかりに
かなり強い力で近江は
私の肩を抱いて離してくれません。
「ね、悪いようにはしませんから
短時間でいいんです
二人で思い出作りをしましょう」
強引な男…
でも私は、そんな強引さに
ちょっぴり惹かれ始めていました。