この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
桜 ~あなたに見られたくて~
第9章 母 陽子
一方、そのころ母の陽子と綾辻は…
「綾辻さん…私とこうして腕を組んで歩くのって
恥ずかしくありません?」
「どうして?」
「だって…やはり歳の差が…
すれ違う人がジロジロ見てゆくわ」
「それは貴女が美女だからですよ」
「まあ!お上手なんだから」
「上手なのはおしゃべりだけじゃないですよ
試してみます?」
いつしか二人は
ラブホテル街の一角に脚を踏み入れていた。
「えっと…私はあなたが思うような
尻の軽い女じゃないので…」
陽菜と別れて綾辻とデートするのは全然OKだけど
いきなり肉体関係というのは考えられなかった。
「昔は、それなりの仕事をしてたじゃないですか」
「えっ?」
「隠しても無駄ですよ
あなた、此花咲恵という芸名で
AVに出てたでしょ?」
此花咲恵…久方ぶりにそう呼ばれた…
そう、綾辻の言うように
もう四半世紀も前に
陽子はカメラの前で裸体をさらし
AV嬢としてそれなりに売れていた時期があった。
「僕、あなたの出演作のビデオを
すべて持っているんですよ」
そう、マセたガキだった綾辻は
未成年でありながら此花咲恵のヌードに
心底惚れていたのだ。
「あの時、あそこで声をかけた時は
我が目を疑いましたよ
なんたって当時のままのあなたが
街を歩いていたんだから」
あなたとセックス出来れば死んでもいい…
僕はずっとあなたに憧れていたんです。
そのように言われれば
陽子としても悪い気はしない。
「わかったわ…一度だけよ…」
一途に此花咲恵を思い続けてくれていたファンに
恩返しのつもりで抱かれることを承諾した。