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インセスト・タブー
第2章 縺れていく血の糸
あたしはカレルと別れた後、王宮近くのある邸へ向かっていた。さる高貴なお方から呼ばれていたのだ。

廊下を歩いていると、正面から見覚えのある人物が歩いてきた。

「久しぶりね、ゴーシュ」
あたしは立ち止まり、声を掛けた。と、その人物もあたしに気づき、会釈する。

「ああ、こんにちは。“エオレ様”」
そう言った青年は、あたしとそう変わらぬ歳だ。その彼の言葉に、顔を曇らせた。

「…前にも言ったけど、“様”はいらないわよ」

「いいえ、“兄弟とはいえ”身分が違いますから。…ああ、これは世間一般には隠していることでしたね。申し訳ありません」
ゴーシュは皮肉を込めて言った。あたしは口を開こうとするが、それを遮るように彼は続ける。

「それより、エオレ様もポズナン公のところへ?」

「そうよ。あなたも?」

「ただいまお会いして参りました。これから帰るところです」

「そう」

「では、失礼します」
結局青年は最後まで固い口調を貫き、足早に去っていった。
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