この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
インセスト・タブー
第2章 縺れていく血の糸
あたしはカレルと別れた後、王宮近くのある邸へ向かっていた。さる高貴なお方から呼ばれていたのだ。
廊下を歩いていると、正面から見覚えのある人物が歩いてきた。
「久しぶりね、ゴーシュ」
あたしは立ち止まり、声を掛けた。と、その人物もあたしに気づき、会釈する。
「ああ、こんにちは。“エオレ様”」
そう言った青年は、あたしとそう変わらぬ歳だ。その彼の言葉に、顔を曇らせた。
「…前にも言ったけど、“様”はいらないわよ」
「いいえ、“兄弟とはいえ”身分が違いますから。…ああ、これは世間一般には隠していることでしたね。申し訳ありません」
ゴーシュは皮肉を込めて言った。あたしは口を開こうとするが、それを遮るように彼は続ける。
「それより、エオレ様もポズナン公のところへ?」
「そうよ。あなたも?」
「ただいまお会いして参りました。これから帰るところです」
「そう」
「では、失礼します」
結局青年は最後まで固い口調を貫き、足早に去っていった。
廊下を歩いていると、正面から見覚えのある人物が歩いてきた。
「久しぶりね、ゴーシュ」
あたしは立ち止まり、声を掛けた。と、その人物もあたしに気づき、会釈する。
「ああ、こんにちは。“エオレ様”」
そう言った青年は、あたしとそう変わらぬ歳だ。その彼の言葉に、顔を曇らせた。
「…前にも言ったけど、“様”はいらないわよ」
「いいえ、“兄弟とはいえ”身分が違いますから。…ああ、これは世間一般には隠していることでしたね。申し訳ありません」
ゴーシュは皮肉を込めて言った。あたしは口を開こうとするが、それを遮るように彼は続ける。
「それより、エオレ様もポズナン公のところへ?」
「そうよ。あなたも?」
「ただいまお会いして参りました。これから帰るところです」
「そう」
「では、失礼します」
結局青年は最後まで固い口調を貫き、足早に去っていった。