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インセスト・タブー
第2章 縺れていく血の糸
「私がこの邸の主、ポズナン公オパリンスキ。こちらにおわすのは、国王陛下の弟君の御子、アデム殿下だ」
左側に座る人物が言った。先ほどと同じ声だった。
あたしは深々と頭を下げる。
「…殿下」
ポズナン公が、始終黙ったままのアデム殿下に促した。
……?どうしたのかしら。
自分のこの姿が、不快にさせたのだろうか、と身を固くした時だった。
「…何を言えばよいのだ。わからぬ」
ぼそりと殿下は仰った。
えっ、という驚きが喉もとまで出かかったが、押し止めた。
何を言えばいいかわからぬというのは、何を言うべきかわからぬということだ。幼少の頃から王の公務に同席する皇太子ならともかく、幼い殿下には、こういった機会がまだあまりないのだろう。
殿下のお立場や御年齢を考えれば、社交辞令的な文句や挨拶をご存じないのも無理もないのかもしれない…。
ゴーシュもここへ来たはずだがその時はどうしたのだろう、と一瞬思ったが、あまり深く考えないことにした。
「今日はご足労をかけたな、など軽く気遣いの言葉を。何でも良ろしいのです」
「…ご足労をかけた」
独り言のように小さな声だった。やり取りを聞いていたため、自分へのお声かけだとわかる。
「いえ。ありがとうございます」
左側に座る人物が言った。先ほどと同じ声だった。
あたしは深々と頭を下げる。
「…殿下」
ポズナン公が、始終黙ったままのアデム殿下に促した。
……?どうしたのかしら。
自分のこの姿が、不快にさせたのだろうか、と身を固くした時だった。
「…何を言えばよいのだ。わからぬ」
ぼそりと殿下は仰った。
えっ、という驚きが喉もとまで出かかったが、押し止めた。
何を言えばいいかわからぬというのは、何を言うべきかわからぬということだ。幼少の頃から王の公務に同席する皇太子ならともかく、幼い殿下には、こういった機会がまだあまりないのだろう。
殿下のお立場や御年齢を考えれば、社交辞令的な文句や挨拶をご存じないのも無理もないのかもしれない…。
ゴーシュもここへ来たはずだがその時はどうしたのだろう、と一瞬思ったが、あまり深く考えないことにした。
「今日はご足労をかけたな、など軽く気遣いの言葉を。何でも良ろしいのです」
「…ご足労をかけた」
独り言のように小さな声だった。やり取りを聞いていたため、自分へのお声かけだとわかる。
「いえ。ありがとうございます」