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インセスト・タブー
第2章 縺れていく血の糸
頭を低くしたまま申し上げると、「殿下は」とポズナン公が口を開いた。

「今日、この者に申し付けることがおありなのでしたな」

「そうだ」
そうお答えになったのを、やっとの思いで聞き取った。

「面を上げよ」
今度は殿下が仰り、あたしは再び目線を上げた。殿下はあたしの目をまっすぐ見据える。

「エオレといったな。余はそなたに、剣の指導を頼みたい」
これまでより少々大きな声量で、はっきりと告げられた。


…剣の指導?

「わたくしが殿下に、ですか?」
目をぱちくりさせて尋ねた。

「…嫌か?」
わずかに間を置き、不安げに尋ね返される殿下。滅相もないことでございます、とあたしは即座に否定する。

「恐れながら申し上げますが…そのような大役、なぜわたくしに仰せつかるのでしょう?」
慎重に言葉を選びながらではあったが、本音だった。

「わたくしよりも、師とするに相応しい手練れの剣客は多くおります。そういった者たちを差し置きお引き受けするなど、そのような身の程の弁えないこと、騎士でもないわたくしにどうしてできましょうか」
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