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インセスト・タブー
第3章 主たる器の人は心の鎧にキスをする
その頃あたしは、王宮にいた。約束通り、アダム殿下の剣のお相手をしていたのだった。

「はっ!」
殿下の果敢な攻め。あたしはドレスを翻し、ひらりとかわす。

「やっ!やあっ!」
続けざまに繰り出される殿下の突きをいなし、逆に隙をつく――殿下の剣をめがけて払った時、しまったと思う。

カララン!と、けたたましい金属音を響かせ、剣が転がった。殿下の細い剣だ。

「…また負けだ」
殿下が仰り、地面の剣に手を伸ばされた。

「殿下、わたくしが」
剣を手早く納め、あたしが拾おうとするが、よい、と殿下は制する。

「そなたは強いな」
拾い上げ、納めながらそう仰せの殿下の表情は、どこか嬉しそうだった。

「ありがとうございます。殿下はまだお若いゆえ、年長のわたくしとは力の差が生じるのも当然。もし殿下と私が同じ年齢であったならば、わたくしなど足元にも及ばなかったでしょう」

「…よせ。力の差だけでないことくらい、余もわかっておる。剣の扱いが、余よりもそなたが優れておるのだ」
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