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インセスト・タブー
第3章 主たる器の人は心の鎧にキスをする
「ふむ」
それだけ仰せになると、殿下は少し黙り込んだ。
「実はな。この役を頼んだのは、剣の腕のほか、そなたのその姿も理由の一つなのだ」
「わたくしの姿が?」
「うむ。…余はこの通り、剣を持つ時以外は、そなたの申したような“受け身”なのだ。殊に同性――初対面の男性の前では、思うようにしゃべれぬ。だからそなたの噂を聞いて、この者なら剣を語るのによいかもしれないと思ったのだ」
あたしの姿について、あの場でお二人が触れられなかったのは…そういうことだったのか。ポズナン公も承知で、むしろ殿下にそういう事情があったためお叱りを受けることもなかったのだ。
「…今の話は誰にも申すな、余も先ほどのことは黙っておる。お互い様だぞ、エオレ」
殿下は、ふっと笑まれた。
…なるほど。
殿下のご配慮に、あたしは心から感謝した。今日だけで殿下の人徳の大きさをほとんど垣間見た気がした。
アデム殿下と別れ、廊下を歩いていると、またもゴーシュの姿を見つける。声をかけようとした時、怒号が聞こえてきた。
「この剣ではない!」
レイピアのような細身の剣を手に、怒鳴り付けるゴーシュ。
それだけ仰せになると、殿下は少し黙り込んだ。
「実はな。この役を頼んだのは、剣の腕のほか、そなたのその姿も理由の一つなのだ」
「わたくしの姿が?」
「うむ。…余はこの通り、剣を持つ時以外は、そなたの申したような“受け身”なのだ。殊に同性――初対面の男性の前では、思うようにしゃべれぬ。だからそなたの噂を聞いて、この者なら剣を語るのによいかもしれないと思ったのだ」
あたしの姿について、あの場でお二人が触れられなかったのは…そういうことだったのか。ポズナン公も承知で、むしろ殿下にそういう事情があったためお叱りを受けることもなかったのだ。
「…今の話は誰にも申すな、余も先ほどのことは黙っておる。お互い様だぞ、エオレ」
殿下は、ふっと笑まれた。
…なるほど。
殿下のご配慮に、あたしは心から感謝した。今日だけで殿下の人徳の大きさをほとんど垣間見た気がした。
アデム殿下と別れ、廊下を歩いていると、またもゴーシュの姿を見つける。声をかけようとした時、怒号が聞こえてきた。
「この剣ではない!」
レイピアのような細身の剣を手に、怒鳴り付けるゴーシュ。