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インセスト・タブー
第4章 歪みは波紋のように広がり
――乱れた服を直し、髪を一つに結う。隣には、バランスよく筋肉のついた、美しい裸体をさらすカレル。

「そう言えば今日、殿下が妙なことを仰ったのよねぇ…」
あたしは、今日の剣の稽古を思い出していた。

「殿下が?」

「ええ。“余たちの打ち合いを見ておる者がおったが、そなたの知り合いか”と」

「へえ。どんなやつだったんだ?」

「…それが、あたしが見たときは誰もいなかったのよ」

「まさか…」
人ならざるものか、と顔をひきつらせてカレルが言った。本気で怖がり始めたカレルについ笑ってしまいつつも、安心させるようにきっぱりと否定する。

「…あたしが見た時には帰っちゃってただけで、ちゃあんと人よ。女の子って仰せだったわ。昨日も来てたみたいだから、もしかしたら明日も来るかも」

「毎日か。…もしやお前を見てるんじゃないか?男でも女でも、お前目当てなら不思議じゃない」

「でも王宮でのことよ?あたしの姿を面白がって見に来るような人、王宮にはいないわよ」
王宮にはもっと魅力的で面白くて稀有なものが溢れてるんだから、とあたしが言うと、カレルは呆れたように深いため息をついた。

「お前、なんっにもわかってないな」
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