この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
インセスト・タブー
第4章 歪みは波紋のように広がり
翌日、あたしは前日、前々日と同じように王宮へ赴き、殿下と剣を打ち合っていた。
筋力は短期間でそう変わるものでもないが、かわしたり、いなしたり、フェイントをかけるなどの細かな技術については、殿下はどんどん腕をあげ、めきめきと上達していた。
この数日でこうも向上するとは、やはり殿下には剣の才があるのかもしれない。そう思いながら、打ち返すのに必死になっていた時、殿下が声を低くしてあたしに呼び掛けた。
「…エオレ」
殿下が剣を打ちながら、目だけで示した。
その先を追い、相手に気づかれないよう盗み見ると――この稽古場の片隅からじっと、誰かがこちらを見ていた。
視線を殿下に戻す。
「…あの者だ。知り合いか?」
「…いいえ、直接は。ただ、どこの者かはわかっておりますので、ご安心を」
あたしの言葉に殿下は、ちら、と水晶のように透き通った目であたしを見――そうか、とだけ静かに仰った。
稽古を終え、王宮を出ようとした時、あたしを呼び止める者がいた。
「エオレ様」
筋力は短期間でそう変わるものでもないが、かわしたり、いなしたり、フェイントをかけるなどの細かな技術については、殿下はどんどん腕をあげ、めきめきと上達していた。
この数日でこうも向上するとは、やはり殿下には剣の才があるのかもしれない。そう思いながら、打ち返すのに必死になっていた時、殿下が声を低くしてあたしに呼び掛けた。
「…エオレ」
殿下が剣を打ちながら、目だけで示した。
その先を追い、相手に気づかれないよう盗み見ると――この稽古場の片隅からじっと、誰かがこちらを見ていた。
視線を殿下に戻す。
「…あの者だ。知り合いか?」
「…いいえ、直接は。ただ、どこの者かはわかっておりますので、ご安心を」
あたしの言葉に殿下は、ちら、と水晶のように透き通った目であたしを見――そうか、とだけ静かに仰った。
稽古を終え、王宮を出ようとした時、あたしを呼び止める者がいた。
「エオレ様」