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インセスト・タブー
第4章 歪みは波紋のように広がり
翌日、あたしは前日、前々日と同じように王宮へ赴き、殿下と剣を打ち合っていた。

筋力は短期間でそう変わるものでもないが、かわしたり、いなしたり、フェイントをかけるなどの細かな技術については、殿下はどんどん腕をあげ、めきめきと上達していた。

この数日でこうも向上するとは、やはり殿下には剣の才があるのかもしれない。そう思いながら、打ち返すのに必死になっていた時、殿下が声を低くしてあたしに呼び掛けた。

「…エオレ」
殿下が剣を打ちながら、目だけで示した。

その先を追い、相手に気づかれないよう盗み見ると――この稽古場の片隅からじっと、誰かがこちらを見ていた。

視線を殿下に戻す。

「…あの者だ。知り合いか?」

「…いいえ、直接は。ただ、どこの者かはわかっておりますので、ご安心を」

あたしの言葉に殿下は、ちら、と水晶のように透き通った目であたしを見――そうか、とだけ静かに仰った。


稽古を終え、王宮を出ようとした時、あたしを呼び止める者がいた。

「エオレ様」
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