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インセスト・タブー
第5章 おのが癒しを求めて他が苦しみを生む
事務的なやり取りなら平気だと言ったが、正直なところ今でもまだ女性に対して苦手意識があり、会話どころか同じ空間にいるだけで苦に感じる。
このオパリンスキ邸には夫人をはじめ、使用人など多くの女性がいる。だがそれは大抵の奉公先に言えることで、女性と接することの全くないところなんてない。だからあたしは今まで、カレルや同じ年頃の男子のように他家に仕えることができずにいたのだ。
と、視界の片隅に、例の少女をとらえる。ちら、と盗み見すると、他の使用人たちと話しているようだ。
あたしはその一角をまるごと避け、別のルートから目的の場所へ向かおうと迂回した。
殿下に、この姿は鎧なのだと申し上げたが…それもほとんど嘘だ。女性を前にした時、平静を装ってはいても、心の中では今でも萎縮してしまっているし、何より…あの人から自身を守れていない。そのための鎧だったはずなのに。
あの人には、あたしの見た目が男性だろうと女性だろうと関係ない。昨日だってあんな風に…。
「っ!!」
昨日のあの感触を思い出す。身の毛のよだつような感覚。そして、それを引き金にして連鎖的に甦った。忘れたい、でも忘れられない過去の記憶――
このオパリンスキ邸には夫人をはじめ、使用人など多くの女性がいる。だがそれは大抵の奉公先に言えることで、女性と接することの全くないところなんてない。だからあたしは今まで、カレルや同じ年頃の男子のように他家に仕えることができずにいたのだ。
と、視界の片隅に、例の少女をとらえる。ちら、と盗み見すると、他の使用人たちと話しているようだ。
あたしはその一角をまるごと避け、別のルートから目的の場所へ向かおうと迂回した。
殿下に、この姿は鎧なのだと申し上げたが…それもほとんど嘘だ。女性を前にした時、平静を装ってはいても、心の中では今でも萎縮してしまっているし、何より…あの人から自身を守れていない。そのための鎧だったはずなのに。
あの人には、あたしの見た目が男性だろうと女性だろうと関係ない。昨日だってあんな風に…。
「っ!!」
昨日のあの感触を思い出す。身の毛のよだつような感覚。そして、それを引き金にして連鎖的に甦った。忘れたい、でも忘れられない過去の記憶――