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インセスト・タブー
第5章 おのが癒しを求めて他が苦しみを生む
ぐちゃぐちゃした頭がようやく落ち着きを取り戻したのは、殿下との剣のお時間ちょうどという頃だった。慌ててオパリンスキ邸へ戻ると、殿下は中庭のガーデンテーブルにて、カップを手にくつろいでおいでだった。

「お待たせして申し訳ございません」
あたしは地に膝をつく。殿下は傍に従者もつけず、お一人のようだ。

「エオレか」
殿下はお怒りのご様子もなく、そこへ掛けよ、とテーブルを挟んだ左斜め向かいをお示しになる。

失礼します、と腰を掛けると、殿下はカップをカチャリと置かれた。

「事情は大体聞いた。すごい顔色で邸を出ていったそうだな。大事ないか?」

「はい。ご心配をおかけして申し訳ありません」
頭を下げながら、自分の失態を恥じた。殿下はただ静かに、よい、と仰り、少しの沈黙のあとぽつりと口を開かれた。

「今日は稽古はやめ、少し話でも致すか」

「……は」
殿下の思わぬ打診に一瞬、目をしばたたかせるが、承知する。殿下はふと中庭へお目を移された。暖かな陽射しが、青々とした芝生に降り注いでいた。

「すまぬな」
殿下は仰った。
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