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インセスト・タブー
第6章 苦しみから逃れるには勇気を以て立ち向かえ
扉の外へ少女を残し、ドレスを手に部屋へ入る。その小さな部屋は、他人のにおいがした。あまりじろじろ見るのも気が引けるので、そう奥へは行かず手前の方で手早く着替え始める。

と、ふらつき――近くの衣装ダンスの角に手をついた。このドレスが入っていたタンスだ。あれ、と凝視する。初めて目にしたはずなのに、どことなく見覚えがある気がする…。

タンスの上には、小物やら小道具やら、雑多なものが置かれていた。あたしはその中の一つに、ふと目を留めた。…手鏡だ。

少し借りて、湿った髪を整える。肩までの小さな自分が、あたしを見つめ返した。“男”が出てきた体つきに、虚しさを覚えた。“男”に嫌気が差したのではなく、“男”と“女”の違いに…“性”を感じることに嫌悪感を抱いた。

ドレスに袖を通すと、やはり懐かしい香りがふわっと空気に乗って鼻を掠めた。花の香りだろうか。

そうして着替え終わり、少女の部屋を出る。ありがとうございました、を背で聞き、酒場をあとにした。





その夜、あたしはベッドで横になり、眠気が訪れるのを待っていた。ぼんやりと、今日のことを考えていた。

あの少女はいったい何者なのか。なぜあたしに構うのか…。

…いえ、今日はあたしから関わったのだけど。ふ、と苦笑する。最近、自分のことがよくわからない。なぜ苦手な人にわざわざ近づき、助けたのか。
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