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インセスト・タブー
第6章 苦しみから逃れるには勇気を以て立ち向かえ
靴もはかずに、ドレスを着込みながら駆けていく。目的地はない。ただ、逃げ出したかった。
無我夢中で走っていると、息が切れ、走るスピードも徐々に落ちていく。
ゆっくりと歩きながら、周囲の景色に目をやり、そこでやっと異変に気づく。そこは、見知らぬ道だった。
腰を下ろせそうな場所を見つけて座る。冷たく、固い。
はあ、と深く息を吐き出した。
「エオレ様…?」
声の方を見やると、やはりあの少女だった。白い花を抱えている。…目を伏せた。
花束を脇に置き、少し離れて隣に座る少女。あたしはびくりとし、咄嗟に少女の手を見た。…自身の膝の上に静かに置かれていた。
「“また”何かあったんですね、エオレ様」
あたしを知っているような少女の言葉にも、あたしは沈黙していた。君は何者なの、と聞くのすら忘れていた。どうでもよくなっていた。
「ごめんなさい…、私は無力で、見ていることしかできません」
少女の消え入りそうな声。少しだけ顔を上げ、ちらと少女を見ると、その横顔は、どこか懐かしい気がした。
少女はそれから何も言わず、ただ傍にいた。
無我夢中で走っていると、息が切れ、走るスピードも徐々に落ちていく。
ゆっくりと歩きながら、周囲の景色に目をやり、そこでやっと異変に気づく。そこは、見知らぬ道だった。
腰を下ろせそうな場所を見つけて座る。冷たく、固い。
はあ、と深く息を吐き出した。
「エオレ様…?」
声の方を見やると、やはりあの少女だった。白い花を抱えている。…目を伏せた。
花束を脇に置き、少し離れて隣に座る少女。あたしはびくりとし、咄嗟に少女の手を見た。…自身の膝の上に静かに置かれていた。
「“また”何かあったんですね、エオレ様」
あたしを知っているような少女の言葉にも、あたしは沈黙していた。君は何者なの、と聞くのすら忘れていた。どうでもよくなっていた。
「ごめんなさい…、私は無力で、見ていることしかできません」
少女の消え入りそうな声。少しだけ顔を上げ、ちらと少女を見ると、その横顔は、どこか懐かしい気がした。
少女はそれから何も言わず、ただ傍にいた。