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インセスト・タブー
第8章 心のすぐ横を通りすぎていく
「奇怪だろう」
殿下は袖にお手を通されながら、自らを嘲笑うように仰った。
「両親にも気味悪がられている。男でもあり、女でもある。また、男でもなく、女でもないのだ」
殿下の切なげな笑みが、胸を締め付けた。
「生まれた時は、男子と思われた。男子の特徴が強かったからな。そしてそのように育てられた。だが物心つく頃…余は男として扱われるのを嫌がった。余自身はその頃、自分を女だと思っていたのだ」
「――だがな、今は違う。今は、余自身も…自分が男なのか女なのか、わからなくなってきた」
殿下がベッドに腰を掛けられる。お身体の秘密は、すっかり隠されてしまって、もう見えない。
「殿下…」
「余は昔から年の離れた兄とよく比べられた。兄は余と違い、何においても優秀だった。そんな嫡子がいたから、家にとっては余などどうでもよかった。たまに女のような振る舞いをしても、両親は無頓着だった。…兄が姿を消すまではな」
殿下にご兄弟がいらしたとは…初耳だった。
「姿を消す…まさか良からぬことを企てた輩が…?」
「…いや、自ら出ていったらしい。置き手紙があったからな。もう何年も前のことだが、兄はそれから姿を見せていない。そして優秀な嫡子を失った両親は…仕方なく、余を嫡子として据えようと教育しているのだ。もちろん男としてな」
殿下は袖にお手を通されながら、自らを嘲笑うように仰った。
「両親にも気味悪がられている。男でもあり、女でもある。また、男でもなく、女でもないのだ」
殿下の切なげな笑みが、胸を締め付けた。
「生まれた時は、男子と思われた。男子の特徴が強かったからな。そしてそのように育てられた。だが物心つく頃…余は男として扱われるのを嫌がった。余自身はその頃、自分を女だと思っていたのだ」
「――だがな、今は違う。今は、余自身も…自分が男なのか女なのか、わからなくなってきた」
殿下がベッドに腰を掛けられる。お身体の秘密は、すっかり隠されてしまって、もう見えない。
「殿下…」
「余は昔から年の離れた兄とよく比べられた。兄は余と違い、何においても優秀だった。そんな嫡子がいたから、家にとっては余などどうでもよかった。たまに女のような振る舞いをしても、両親は無頓着だった。…兄が姿を消すまではな」
殿下にご兄弟がいらしたとは…初耳だった。
「姿を消す…まさか良からぬことを企てた輩が…?」
「…いや、自ら出ていったらしい。置き手紙があったからな。もう何年も前のことだが、兄はそれから姿を見せていない。そして優秀な嫡子を失った両親は…仕方なく、余を嫡子として据えようと教育しているのだ。もちろん男としてな」