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インセスト・タブー
第2章 縺れていく血の糸
「かのお方の後ろ楯があれば、騎士の名家を奉公先に選ぶこともできるかもしれないぞ。俺が相手をするより、その方がお前の剣の腕もさらに磨けるだろ。今すぐ申し出た方がいい」

茶髪の青年は目を輝かせた。彼の興奮した様子とは対照的に、金髪の青年は冷静だった。金髪の青年は笑みを浮かべたまま目を伏せ、軽く息を吐く。

「しないわ」

「なんで?」
予想外の返答に、剣を納める手を止める。

「あたしは、騎士見習いの奉公はしない」
彼は繰り返した。

「だからなんで」
理由を尋ねるというよりかは、こんなチャンスをどうして、と責めるような口調だった。

「こんな格好を受け入れてくれるところなんてないわよ」

「あるさ!現に…」

「それはこの格好が日常になる前のことよ。あの頃はまだ誰も、こんな私を知らなかった」

「それは」

「もういいの、カレル。あたし自身、どこかの家に仕えるつもりなんてないんだから」
そう言って背を向ける青年が、カレルと呼ばれた青年には悲しげに見えた。
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