この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
混沌の館
第11章 愛の因子
それを聞いた時、苦い記憶が蘇った。
私は、久美との別れ際、避妊しない彼がもし子供が出来たとして、責任を取ってくれると思ったら大間違いだと忠告した。彼女はそれを、余計な事だと一蹴したが、図らずもその忠告が的中したのだ。
久美がその男に妊娠を伝えると、その男は、『自分以外にも男が居るんじゃないのか?簡単に中出しさせる癖に、俺の子かどうか分からないのに責任は持てない』と言ったらしい。
そんな扱を受けているのに、その男と別れられないでいる久美が哀れに思えた。
そんな男のどこが好きなのだ?私の方が久美に優しく接するし、何よりも彼女を愛していたのに。
私は、久美を哀れんだ。しかし、私も久美への想いをくすぶり続けさせていた。自分自身こそ哀れむべき存在なのだと嘲った。
苦い表情の私へ、止めの一言が浴びせられた。
「今日、狸さんに会いたかったのは、お願いがあったからなんです」
次に続く言葉は容易に予測できた。
「お金を貸してくれませんか?」
「何時までも無職ではいられないし、でも、妊娠したままじゃ就職できないから・・・」
「いくら必要なの?」
私は、自嘲気味に口の端を歪めた。
私は、久美との別れ際、避妊しない彼がもし子供が出来たとして、責任を取ってくれると思ったら大間違いだと忠告した。彼女はそれを、余計な事だと一蹴したが、図らずもその忠告が的中したのだ。
久美がその男に妊娠を伝えると、その男は、『自分以外にも男が居るんじゃないのか?簡単に中出しさせる癖に、俺の子かどうか分からないのに責任は持てない』と言ったらしい。
そんな扱を受けているのに、その男と別れられないでいる久美が哀れに思えた。
そんな男のどこが好きなのだ?私の方が久美に優しく接するし、何よりも彼女を愛していたのに。
私は、久美を哀れんだ。しかし、私も久美への想いをくすぶり続けさせていた。自分自身こそ哀れむべき存在なのだと嘲った。
苦い表情の私へ、止めの一言が浴びせられた。
「今日、狸さんに会いたかったのは、お願いがあったからなんです」
次に続く言葉は容易に予測できた。
「お金を貸してくれませんか?」
「何時までも無職ではいられないし、でも、妊娠したままじゃ就職できないから・・・」
「いくら必要なの?」
私は、自嘲気味に口の端を歪めた。