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混沌の館
第16章 遠距離恋愛
 千夏は私の事をどう思っているのだろう?


 友達以上とは思っているだろう。手を繋ぎ、キスもした。何より、女友達よりも私を選んだのだから。それに、私の事を好きだとも言ってくれた。友達よりも恋人に近い存在だと信じて良いだろう。


 私は、デート前の最後の電話で、千夏に確かめてみた。



「今度のデート、まだまだ外は暑いからさ、涼しいところでゆっくりしない?」


「え?涼しいところって・・・?」

「デイユースでシティーホテルをとったんだ。そこでゆっくりしない?」

 私の誘いに、受話器の向こう側で沈黙が起きた。


(やはり、拒絶されるのか?)


 私は、拒絶された場合、それでも良いと思っていた。千夏とはセックスをしなくても十分に楽しい時間を過ごせている。無理に普通の恋人の様にならなくても良いのだ。



「狸さんは・・わたしと、そういう関係になりたいの?」


「うん。やっぱり好きな人とは結ばれたい。もちろん、それは許されない関係だと分かっている」


「そうだけど・・・わたしも、好きな人に愛してほしいけど・・・」

「そうだよね、そこは・・やっぱり抵抗あるよね」


(やっぱりダメか・・・でも、それでいいんだ。彼女の家庭を壊すことは出来ない)


「違うの、違うの・・・」





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