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俺と彼女の理不尽な幽霊譚
第1章 女子高生と俺

どちらかと言えばあまり目立たない、面倒臭がりな俺とコイツがつるむようになったきっかけはやっぱりと言うか女絡みで。今カノと前カノとのいざこざを何の因果か俺が仲裁した事で、何故か懐かれるようになって今に至る。
異性から見ても、同性から見ても腹の立つ事この上無い甲斐性無しの駄目男だが、案外気さくで話し易いので放っておいたらいつの間にか今の関係が成り立っていた。俺としてはその辺、大変不本意だが。


「で?その後どうしたんだよ」

「どうしたもこうしたも…俺が呆気に取られてる隙に逃げられた」

「足りなかった五十円は?」

「……俺が弁償した」

「マジか!!」


何がツボに入ったのか、再びケラケラと腹を抱え笑う奴を睨みつつ、アルコール消毒し終わったトングでウインナーを突っ込む。よし、仕込み終了。


「っつーかお前、いい加減さっさとバイト行け!いつまでここで時間潰してんだよ」

「良いじゃねぇか、どうせ客いねぇんだし」

「余計なお世話だ。そして邪魔。目障り。さっさと出てけ」

「ひでぇな。つーかさ、だって今日も来るかもしれねぇじゃん、その美人ちゃん」


俺も会ってみたい、とのたまった大久保は空になった缶コーヒーをカウンターに置いた。おい、それそのままにする気じゃねぇだろうな。自分で片付けろよ。


「……冗談じゃねぇ」


俺は二度と会いたくない。
盛大な溜め息と共に、缶をゴミ箱へと投げ捨てれば自動ドアが開いて来客を告げる間の抜けた音楽が鳴る。


「あーホラ、仕事仕事。もう行けって」

「えぇー」

「えぇー、じゃねぇよ。男がそんな事言ったって全然可愛くとも何とも…」


野良犬を追い払うようにしっし、と手を振って顔を上げたところで思わず眉間に皺が寄った。まさかのタイミングで話題の人物登場。呼ぶより謗れ、は成程正しいようだ。


「おっ!」

「………っらしゃいませー」


嬉しそうに興奮丸出しの声を上げた大久保とは対照的に、俺の声は限りなくローテンションでついでに言えば入り口を睨む目つきも悪い。
当然だ、だって相手は自分にワンカップをぶちまけた頭のおかしい変人女。愛想良く出来る程俺は人間が出来て無い。


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