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抜いてください
第1章 抜いてください
「奥でなにか引っかかってるんだよ、たぶん。じゃないと、こんなに引っ張って抜けないのは異常だよ」
「いまのあなたの方が異常っ」とは言わずにおんなはだまっている。こんな薄暗い場所に男おんながいつまでいてもいいわけはないのだ。おんなはだまって、どうすればいいのか考えているのだろう。
「わたしじゃ抜けない」と、おんなは囁いた。ほとんどきこえない声のボリュームでたしかにそう囁いた。
「きみじゃというか、きみのあそこからおれのペニスが抜けない」
「そういう意味じゃ」とおんなはいいかけ、今度はおれが悟った。「つまり、いやそういうことか」
「抜けないということはそう言うことだと思います」と丁寧にいって、手首のうでどけいで時刻をかくにんしたおんながまただまった。
「すまないね」とっさに出た。おんなの服装からしてこのあたりで働くオフィスレディだろう。きっとランチに来て、会社にもどる帰りだったのだろう。心なしか街中華の、油淋鶏の香ばしいにおいがおんなの口もとから、声を発するたびに香るようだ。悪いことをした。ランチタイム終わりなのに。ウキウキウオッチング終わりなのに、おれは悪いことをした。
「考えてる暇があったら早く抜けてくださいっ」とおんながさけび、おれに思考がとまった。
「そうだった。すまない、すまない」
「だから」おんなが深いため息をついた。「抜いてください」
 おれは困ってしまう。おれのペニスは。おかれた状況が特殊すぎたせいか、まだギンギンだった。ギンギラギンギラギンギンにさりげなくなかった。熱だってある。それはおんなのあそこの熱なのか、おれのペニス熱かはわからないが、とにかく熱かった。異常に。たまだって。歩きスマホでエロ動画を視聴するぐらいだ。おれの精子はたっぷりそこにたまっていて、早く出たいよ出たいよと、たまの内壁にぶつかって、たまを拡張されていた。一ヶ月は出していない。いろいろ忙しかったから出す暇がなかったのだ。出たら、一度出たら、すさまじい射精になるだろう。抜けないが。それだけは自信があった。
「いいのよ」と、おんなはまた囁いた。
「いいのよ?」
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