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エンドレスサマー
第5章 出会い
 妻に初めて話しかけた日を覚えている。
 九月、体育祭が終わり、振替休日の翌日の授業だった。私は高田美香がなぜか気になった。美香は目だだぬおとなしい生徒であったが、それでも授業中どこかうわの空で何かに悩んでいるように見えた。担任をしているクラスの生徒ではなかったが、授業が終わると「おい、高田、ちょっと来てくれないか?」と言って高田美香を教壇まで呼んだ。そして私は高田美香にこう訊ねた「お前なんか変だぞ。授業全然聞いてなかっただろ」。美香は私を睨むようにしてこう答えた「別に」。「そうか、それならいい」私はそう言って美香を席に返した。
 そして二度目の美香との会話は、美香の方から私に話しかけてきた。
 11月最後の日曜日、私は中学三年生の受験対策の補習(ちなみに参加は自由)で数学を指導するために学校に向かった。通常の授業でない補習は、たとえ学校の教室で行っても正規の授業とは見なされなくて、つまりその授業は教師のボランティアということになる。
 熱血教師がこの世にどれだけいるかわからないが、時間外の手当てが出ず、査定の対象にもならない授業をしたがる教師は少ない。残念ながら私は熱血教師ではない。日曜日、家にいてもすることなどないので補習授業を引き受けた。私の熱血度など所詮その程度なのだ。
 九時授業開始、十二時授業終了。生徒はこの三時間を自由に使うことができる。つまり三時間たっぷり教室で勉強してもよし、十時に来て三十分で帰宅してもよし。授業は質問形式。ちなみに授業は数学と英語で、土曜が英語、日曜が数学となっている。
 八時三十分、私は校舎三階の三年一組の暖房の効いた教室で窓の外をぼんやり眺めていた。すると授業開始三十分前なのに教室の戸が開けられる音がした。目をやると、学校指定の体操着の上に紺色のコートを着て、ピンクのリュックを背負っている高田美香が立っていた。「おはよう」私は美香にそう挨拶をした。美香はそれには答えずに頭だけをぺこりと下げた。窓側の最前列に座ると、テキストとノートを取り出した。私が美香の所に行くと美香は計算問題を解き始めていた。
 私は授業でこう言ったことがある。「数学が嫌いで、何をしたらいいかわからなくても、ゲームをするような感覚で計算問題だけは解け」と。
 美香が私の言葉を覚えていたのかどうかはわからない。しかし、美香は計算問題を解き始めた。
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