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エンドレスサマー
第5章 出会い
 サインを出したわけではない。私のどこかに美香と二人になりたいという気持ちがあったのだろう。受験生のための補習は九時に始まるのだが、私は八時に教室に着くようにした。すると、美香もまた八時過ぎ頃に教室にやって来た。七時に来ると美香も七時に教室に到着する。もちろん私が美香に「早く教室に来い」と言ったことは一度もない。
 こうして私と美香は、補習が始まる前に二人だけの時間を作った。
 二人だけの時間に数学の話は一切出なかった。私の話であったり、美香の話であったり。とにかくその時間はとても短くて、私には貴重な時間だった。
 そういう時間が、私と美香の間にある常識の壁を壊していく。私も美香もそれがわからないわけではないのだが、二人の距離(男と女)が縮まると、私と美香はそれを無視した。
 話の話題も徐々に私と美香の深い部分に進んでいった。例えば初めて付き合ったのはいつ? 誰と? そんな感じで。
 勉強していたから誰とも付き合うことがなかった……こんなつまらない言い訳をしたくなかったので、私は大学一年まで誰とも付き合ったことがないと正直に美香に言った。「まじ?」と驚いた表情で美香は私を見た。「残念だが、まじだ」と答えると、美香は大声で笑った。そしてこう訊ねてきた。「ということは、博士は大学一年生まで童貞だったっていうこと?」  
 私はその中学で生徒たちから「博士」とあだ名をつけられていた。と言うもの、着任した時に校長が私をこんな風に紹介したからだ「西東 正規先生は、〇〇〇〇大学卒業後、大学院に進まれ数学の研究をされていた立派な先生です」。ご丁寧に大学名まで出して紹介されたが、隣でそれを聞いていた私は、どこかに穴があったらはいりたいくらい人生で一番恥ずかしい思いをした。校長は私が大学から追い出されたことを知らない。
 「博士」とあだ名がつけられても、そこに尊敬の念など微塵も含まれてない。要するに生徒は面白おかしく陰で私をそう呼んでいたに過ぎないのだ。それに生徒も私の前では私を「博士」なんて呼ばずに西東先生と呼んだ。
 今どきの生徒は(どの時代でも今どきの生徒だ)、童貞という言葉を平気で使う。もちろん童貞が何であるかもわかったうえで使うのだ。
 売り言葉に買い言葉、私は美香にこう訊ねた。
「じゃあ、お前はバージンなのか?」
「ふふふ」
 美香は意味深な笑いをした。
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