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エンドレスサマー
第6章 ステージ脇の暗い部屋
「和田が私とエッチするためだけに付き合っていたように思えたの。中一から付き合っていたからもうキスとかしていたけど。やっぱりエッチは別。まぁキスの時も和田の手が、私のおっぱいとかおま×こに伸びて来ていたけど」
「……」
美香が女性器を何のためらいもなく言ったのに私は驚いた。
「やられてポイなんて、嫌だから」
「やられてポイ、か」
「博士、私おかしい? 私は変なのかな?」
「いや、お前は正しい。僕はそう思う」
暖房が入らない機械室はひんやりとしていた。私も美香もコートを羽織ってはいたが、冷気は厚いコートの中にも潜り込んでくる。二人の白い息も舞台袖の温度を下げていた。
こんな小さな町の中学でも一人一人に物語が生まれる。
「博士、知ってる?」
「何を?」
「ここ聖地なんだって」
「聖地? 何の聖地なんだ?」
「エッチの」
「エッチの聖地? この機械室が?」
「そう。代々続くこの中学のエッチの聖地」
「代々続く? おい、冗談じゃないぞ」
「冗談なんかじゃないよ。聖地は聖地」
「……」
言葉が見つからない。いろいろな機材が放つ独特な匂いが漂う機械室。ここで中学生が男と女になって交わる。私はそれを想像することができなかった。
「寒いね」
美香はそう言うと静かに私に身を寄せてきた。私はコートを開いて美香をコートの中に招き入れた。シャンプーの香りがした。
「いい匂いだ」
「何?」
美香は私の胸に顔を付けてそう言った。
「シャンプーのいい匂いがする」
「そう」
「臭くないか?」
「えっ?」
「僕は臭くないかと訊いているんだ」
「お父さんよりまし」
「ははは、お父さんよりましか。ははは」
「博士」
そう言って美香は私を見上げた。
「……」
美香が目を閉じた。
私は美香にキスをした。かさかさした小さな唇に自分の唇を重ねた。美香の背中に手を回して引き寄せる。美香の細い体が私のコートの中にすっぽりと入った。その瞬間、私は覚悟した。どんなことがあろうと美香だけは守り抜く。自分の人生をかけて美香の人生を守り抜く、と。
時間を引き戻すことはもうできない。いずれ私は、私を支えてきた数学と離れなければらならない。
後悔などない。本当に……本当に。
そしてこの日を境に、美香は私を博士ではなく先生と呼び始めた。……嬉しかった。
「……」
美香が女性器を何のためらいもなく言ったのに私は驚いた。
「やられてポイなんて、嫌だから」
「やられてポイ、か」
「博士、私おかしい? 私は変なのかな?」
「いや、お前は正しい。僕はそう思う」
暖房が入らない機械室はひんやりとしていた。私も美香もコートを羽織ってはいたが、冷気は厚いコートの中にも潜り込んでくる。二人の白い息も舞台袖の温度を下げていた。
こんな小さな町の中学でも一人一人に物語が生まれる。
「博士、知ってる?」
「何を?」
「ここ聖地なんだって」
「聖地? 何の聖地なんだ?」
「エッチの」
「エッチの聖地? この機械室が?」
「そう。代々続くこの中学のエッチの聖地」
「代々続く? おい、冗談じゃないぞ」
「冗談なんかじゃないよ。聖地は聖地」
「……」
言葉が見つからない。いろいろな機材が放つ独特な匂いが漂う機械室。ここで中学生が男と女になって交わる。私はそれを想像することができなかった。
「寒いね」
美香はそう言うと静かに私に身を寄せてきた。私はコートを開いて美香をコートの中に招き入れた。シャンプーの香りがした。
「いい匂いだ」
「何?」
美香は私の胸に顔を付けてそう言った。
「シャンプーのいい匂いがする」
「そう」
「臭くないか?」
「えっ?」
「僕は臭くないかと訊いているんだ」
「お父さんよりまし」
「ははは、お父さんよりましか。ははは」
「博士」
そう言って美香は私を見上げた。
「……」
美香が目を閉じた。
私は美香にキスをした。かさかさした小さな唇に自分の唇を重ねた。美香の背中に手を回して引き寄せる。美香の細い体が私のコートの中にすっぽりと入った。その瞬間、私は覚悟した。どんなことがあろうと美香だけは守り抜く。自分の人生をかけて美香の人生を守り抜く、と。
時間を引き戻すことはもうできない。いずれ私は、私を支えてきた数学と離れなければらならない。
後悔などない。本当に……本当に。
そしてこの日を境に、美香は私を博士ではなく先生と呼び始めた。……嬉しかった。