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エンドレスサマー
第3章 いたずら
「そう、普通は顔や腕、それから濡れている服とかを拭いてくれるんだけど、ロリコン野郎は違ったわ」
「違った?」
「そう、違ったの」
「どう違ったんだ?」
 どうしても妻を責める口調になる。
「先生、想像してみて?」
「何を想像するんだ?」
「小学二年生の夏の服」
「おい、僕はロリコンなんかじゃないぞ」
「わかっているわよ。でも想像くらいできるでしょ」
「……」
 想像は絶望に繋がった。
「スカートに、上はアニメキャラクターのピンク色のTシャツ。先生も知っているでしょ、ピンクは私のお気に入りの色」
「そうだな」
 妻が選ぶ娘の服は、ピンク色が多い。
「小学二年生だからブラジャーなんてしてないし。だから……」
「……」
 だからの次の言葉が予想できた。
「ロリコンは私のシャツを脱がせたの『バンザイしなさい』って私に言ったわ。逆らえなかった、従うしかないと思ったわ。従うことが唯一自分を守ることのように感じたから」
「……くそ野郎」
「そう、ロリコンはくそ野郎よ」
 妻は、私が言った小さな言葉を憎しみを込めて繰り返した。
「日本が法治国家でなかったら、そのくそ野郎をぶん殴って抹殺してやりたいよ」 
 本当に抹殺したいと思っているのは妻なのだ。
「確かにロリコンは私の体を綺麗に拭いてくれたわ。何度も何度も、体がひりひりするくらいにゆっくりと時間をかけて拭くの。でも私の体を拭いているロリコンの目は私のある部分に集中していたわ」
「……」
 妻が話さなくても、ロリコンの目が小学二年生だった妻のどこに向かっていたのか容易にわかる。
「先生、わかる?」
「ああ」
「そう、私の胸。ぺちゃんこな私の胸。そして小さなピンク色の乳首。私の体を拭きながら目だけは乳首から離れない。ロリコンの目がものすごく怖かった。その目はカメラのようで、私の胸をじっと見ながら撮影しているようだったわ。決して忘れない。ぜったに記憶してやる。そういう執念みたいなものがロリコンの目に含まれていたの」
「……」
 妻の話は、残念だが私が想像したものとほぼ同じだった。膨らみが全くない小学二年生の胸が、卑猥な外道の目から頭に入り、ロリコンの脳に焼き付けられてしまった。
 胸糞が悪くなる。法律で裁かれたとしても、今、そのロリコン野郎に会ったら私はそいつを殴るだろう。間違いなく。
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