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言葉に出来ない
第1章 突然の出会いは進展もなし〜亮平
「患者さんの状態はどうかな?」と、
カルテを観ながら看護師と言葉を交わしながら、
そっと彼女に会釈をする。


「安定してきたね。
頭を打った処の腫れも引いてきてるし、
数値も良い。
小川さん、聴こえますか?」
と声を掛けると、
弱々しいけど、しっかりした受け答えも出来る。


「このまま、数値も安定していたら、
一般病棟に移って大丈夫ですよ。
でも、ナースステーションに近い部屋にするようにね」
と看護師に伝えて、
彼女を見ると、

「先生、ありがとうございます」と深く頭を下げた。


俺も頭を軽く下げてから、
もう一人、脳外でICUに居る患者の方に向かった。


本当はもっと彼女の話をしたかったけど、
なんたってスピーカーのように噂を振り撒く看護師の近くでは、
迂闊なことは言えない。


でも、可愛い彼女の顔を拝めたから、
俺はスキップしたいくらいの気持ちで廊下に出て、
一般病棟に向かった。

口笛すら、吹いていたかもしれなくて、

「あれ?
なんか、ご機嫌だね?」と、
途中ですれ違った内科の先生に笑われてしまった。
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