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言葉に出来ない
第2章 これって好きってこと?〜美由
土曜日の最寄駅の改札は、
そこそこ混み合っていた。

邪魔にならないように、
少しズレた処に立ってみる。


いつもの習慣で、
10分以上前には集合場所に到着していた。


鞄から文庫本を取り出して読み始める。
もしかしたら、
髪型変わってて気が付かなかったりして?

ううん。
私の髪型とか、顔、
ちゃんと覚えてなかったりして?


そんなことをぼんやり考えながら、
文字を追っていく。


電車が到着する度に、
人が流れていくので、
更に端に移動して、
腕時計を見ると、
約束の時間を10分ほど過ぎていた。



お仕事してからの待ち合わせって書いてあったから、
お仕事、長引いてらっしゃるんだろうって思いながら文庫本のページを捲る。


小説に没頭してしまって気づいたら結構時間が経っていて、
もう2時間近く経っていた。


あ…れ…?
バッグから携帯電話を取り出してみたけど、
特に着信はない。


14時じゃなくて、
4時だったのかな?


呑気にそう思って、
読書を続けながら、
なんだか、気になってしまって、文庫本をバッグに入れた。



私、返信しなかったから、
お約束自体が成立してなかったのかしら?

それとも、急患が入って緊急オペになったとか?

まさか、ここに来る途中で事故にあったとか?



急激に不安に襲われてしまって、
脚が震えてしまう。


5時になると、遠くから何かのメロディーが流れてくる。
お子様の帰宅を促す音楽だったかしら?


どうしよう?
もう少しだけ待ってみようかしら?


そう思って、
もう一度、バッグから文庫本を取り出して読み始めてみた。


でも、何だか文字がちっとも入ってこなかった。
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