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言葉に出来ない
第3章 愛の中へ〜亮平
「あっ。
ごめん。
痛かった?」と、肩から手を離すと、
少しだけ身体を震わせてから、
俺を見上げた。


目尻に涙が浮かんでいて、
少し動揺してしまう。



「この指輪、両親から貰って、
ずっと嵌めてるんです。
日本ではそんなにメジャーじゃないかもしれませんけど、
純潔の指輪って言うの。
えっと…真実の愛が待ってるから、
結婚して、結婚指輪を頂くまでずっと嵌めてて…。
それで…」


言いたいことが瞬時に判って、
なんか、胸が一杯になる。

本当に大切に育てられたんだろうなと感じて、
思わず、そっと抱き締めてしまう。


「いい歳して、オカシイでしょう?
それで、酷いこと、言われたこともあるの。
だから、男の人と居るの、怖くて…。
でも、亮平さんは不思議と怖くないの」と言って、
俺の顔を見て、
笑ってくれるけど、
同時に涙が頬を伝って落ちていった。


「5年くらい前に父の仕事の関係の方と婚約した時にね。
無理矢理、押し倒されたの。
その時、思い切り股間を蹴り上げちゃった挙句に、
カールがもうちょっとで喉を噛み切るトコだったの。
その時に、
『いい歳して、処女とか、
気持ち悪いから、こっちから願い下げだ』って罵られた。
それからは、男の方と話したりするのも怖くて、
外に出るの、辞めてたの」


「怖かったね?
酷いこと、されて。
どうせなら、股間、蹴り潰してやれば良かったのに。
あ、俺も不埒なことをしたら、
そうなるのか」と言うと、
美由ちゃんはクスクス笑う。


「亮平さんは、そんなこと、しないでしょ?」


「いや。
オトコだから、約束は出来ないよ。
でも、俺、
美由ちゃんのこと、大切にしたいし、
ずっと一緒に居たいと思ってるから、
美由ちゃんが嫌だと思うことはしないようにするよ?
あ、また、美由ちゃんって呼んじゃった」


「私…亮平さんと3歳しか離れてないから、
ちゃんって呼ばれる歳じゃないですよ?」


「良いじゃん。
可愛いんだから、美由ちゃんでも。
カールが喉を噛み切ることもなかったから、
まあ、認めて貰えたのかな?」と言って、

「純潔って…キスもダメなの?」と訊くと、
恥ずかしそうに下を向くので、
取り敢えず、跪いて手の甲にキスをして、

「お姫様、そろそろランチに参りましょう」と言うと、
恥ずかしそうに指を絡めて繋いでくれた。

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