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言葉に出来ない
第4章 愛を止めないで〜美由
翌日は朝のお散歩は取り止めて、
お弁当を作ってトートバッグに詰めて、
フリスビーやボールも持って、
亮平さんの車にカールも乗せて家を出た。


「あらあら。
カール、デートのお邪魔じゃないのかしら?」とお祖母様が笑いながら見送ってくれた。


「夕食の時間までには送り届けますので…」と律儀な顔で亮平さんが言うと、

「おデートなんだから、
ゆっくりしてくれば良いじゃないの?」とお祖母様は声を上げて笑った。


この日は、
「とっておきの場所だから」と言って、
横須賀か逗子の辺りをくねくねと進んで、
本当に人気のない駐車場に車を停めた。


亮平さんは大きなLLビーンのトートバッグと、
肩から二つほど長細い袋を担いで、

「ちょっと歩くよ?」と言った。


私はエルメスのトートバッグを手に、
もう片方の手でカールのリードを持った。


ちょっと足元が悪い階段をゆっくり降りようとして、

「ちょっと待ってて?
荷物、下に置いてから戻るから!」と言って、
スタスタ降りて行く後ろ姿をぼんやり観ていた。


程なく戻って来ると、
私からリードとトートバッグを受け取って、

「お姫様、お手を!」と言うので、
クスクス笑ってしまったけど、
転ばないように真剣に少しずつ降りて言った。


そこは、プライベートビーチのように人が殆ど居なかった。


ごく稀に、ご近所の方がお散歩に来たり、
遠くの岩場のような処に釣り人が居る程度で、
砂浜には波の溜まりのような処に、
流木やシーグラスが落ちていた。


私は嬉しくなってしまって、
しゃがみこんで拾い始めると、

「時間はたくさんあるから、
まずは座る場所を作ろうか?」と言って、
少し日陰になっている処までのんびり手を繋いで歩いた。


亮平さんはテキパキと椅子とテーブルを設置してくれる。

「テントかパラソルもあった方が良かったかな?
日焼け、しちゃうよね?
俺は日焼けしたいけど」と笑う。


「美由ちゃん、お化粧、してないよね?
これ、塗っておく?」と言って、
日焼け止めクリームを渡してくれるので、
顔と手の甲に塗っていると、
亮平さんはTシャツになる。

そして、
「カール、ちょっと遊ぶか?」と言って、
フリスビーを軽く投げた。
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