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言葉に出来ない
第4章 愛を止めないで〜美由
雨脚が弱まったようで、
雷の音もかなり遠かったところで、
亮平さんが、
「このままじゃ、風邪ひくな?
ちょっと待って?」と携帯電話を出して、
何処かに電話をしていた。



「ご無沙汰してます。
サッカー部の主将をしていた高木です。
あ、はい。元気です。
あのですね。
近くにドライブに来たら、
さっきの豪雨にぶつかってしまって、
全身ずぶ濡れで…。
はい…。
連れが居るんですけど。
それと、犬も居て…。
大丈夫ですか?
ありがとうございます!
では、後ほど!」



電話が終わると、
学生時代に世話になった民宿が近くにあるから、
そこで服とか、乾かして貰おうと言って、
車を15分ほど走らせると、
海沿いの小さな民宿に到着した。



中から、割烹着姿で、頭に手拭いを被ったふくよかなおばさまが出て来て、

「亮平くん、久し振りだね?」と笑って言った。



「あらら。
綺麗なお嬢さんと、大きな犬だこと!
こっちに早く!
風邪、引くから!!」と手招きされて、
入り口の横から、奥のお風呂場に連れて行かれる。


「家の中で飼うような犬でしょ。
一緒に洗ってあげて?
タオルと浴衣、こっち。
洗濯機も使うと良いよ。
亮平くんは、向こうの大浴場に行って貰うから。
こっちは、家庭風呂で、小さいけど、
一通りあるから、
何でも使うと良いよ」と言われて、
頭を下げた。



カールは洗い場で、
シャワーを使って砂を落としたりしてあげて、
私も身体と髪を洗ってから、
ゆっくり湯船に浸からせて貰うと、
かなりホッとした気持ちになった。


下着まで濡れていたので、
洗濯機に入れてから、
きっちり浴衣を着てみる。

カールもしっかり、水分を取ってから、
軽くドライヤーで乾かしてあげる。


母屋の方に戻ると、
亮平さんも浴衣姿で、
脱いだ服を抱えていたので、
受け取ってから、
「洗濯機、お借りしますね?」とおばさまに声を掛けて、
一度、お風呂場の方に戻ってから、母屋に戻った。



おばさまは、
色鮮やかな自家製のお漬物と温かい番茶を出してくださったので、
お辞儀をして、
そっと両手で大振りの湯呑みを持って、
息を吹きかけた。
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