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言葉に出来ない
第5章 Yes-No〜亮平
翌週も朝のカールの散歩に合わせてデートをして、
火曜日は、病院にお祖母様の検査と診察で外来に来たから、
病院でも会えた。


「帰り、大丈夫?
送ろうか?」と小さい声で訊くと、

「荒井さんが運転して連れて来て貰ったから、
大丈夫です」と言われた。


そうか。
荒井さんは、多分元々、
運転手さんなんだろうなと思った。


ばあちゃんに電話もした。

「まあまあ、びっくりしたじゃない。
素敵なお嬢様よ?
わたくし、何度かお茶会でご一緒してましたし、
貴方も会ったこと、なかったかしら?
お互いの家、遊びに行ったりしてたもの」と、
上機嫌だった。


「週末、遊びにいらっしゃいな」と嬉しそうで、
ちょっと気難しいじいちゃんも、
とても喜んでいると言っていた。


「京都に挨拶に行きたいって、
真由子様、仰ってたけど、
わたくしも久し振りに行こうかしら?
嵐山辺りで、川床料理なんて、良いじゃない?
たん熊さんでも良いし。
まさか、Noなんて、言わないわよね?
あちらのお祖母様、
少し意地悪だから、心配だわ?」と言っていた。


うん。
京都のばあちゃんは、
ばあちゃんなんて呼んだら口も聞いてくれないし、
俺のこと、嫌ってるからな。
母さんにも厳しくて、
よく泣いてたけど、
俺、何も出来なかったし、
逃げるようにこっちに出てしまったし。


冷たい家に冷たい家族。

あんまり、美由ちゃんに会わせたくないと、
正直思ったけど、
結婚となったら、そういう訳にもいかない。


万が一、ダメだと言われたら、
別に勘当されようが、
縁を切られようが、
構わないと密かに思っていた。

こっちのじいちゃんとばあちゃんが家族。

京都の家族は、正直、家族って感じ、しない。


正月にも戻らないくらいだから、
何年、あの家に戻ってないのかなと思ったら、
美由ちゃん、連れて行くのを想像して、
ちょっと緊張してしまった。
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