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言葉に出来ない
第5章 Yes-No〜亮平
翌日、じいちゃんとばあちゃんを車で迎えに行くと、
じいちゃんはダークスーツで、
ばあちゃんも紋のついた着物を着ていた。

俺はいつものように、
ジャケット姿だったので、

「まあ!
そんなカジュアルな格好で行くの?
お花とか、指輪とかは?」と言われてしまう。


「いや。
指輪はまだで…。
そっか。
花は買って行く。
服装、これじゃ、ダメかな?」と言うと、

「きちんとダークスーツにネクタイはしないと!
ねえ?
あなた?」と畳み込まれるように言われて、
一度、マンションに帰って着替えることになった。
そして、駅の花屋、
4時間待たせた日に花を買ったあの店で、

「プロポーズ用の花束ください!」と言って、
ありったけの赤い薔薇を束ねて貰った。



美由ちゃんの家に到着して、
玄関のドアが開くと、
お祖母様も美由ちゃんも着物姿で、
ポカンとしてしまった。


二人のお祖母様達は、
クスクス、女学生のように笑って、

「作戦、成功ね?
折角だから、お着物にしたかったのよね?」と悪戯っぽい顔をする。


「亮平さん、ごめんなさいね?
お着物のこと、サプライズにしましょうって、
お祖母様が言うので…」と申し訳なさそうな顔をするけど、

「良いよ。
凄く可愛いから!」と言うと、
また、お祖母様達に笑われてしまい、
じいちゃんは咳払いをした。


「あら。
失礼致しました。
ようこそ。
さあ、どうぞ中に!」と美由ちゃんのお祖母様が言って、
美由ちゃんがスリッパを揃えながら、

「いらっしゃいませ」と言ってくれる。



いつものリビングのような部屋ではなく、
応接室に通される。


美由ちゃんに、
「これ…」と言いながら、
薔薇の花束を渡すと、

「おい。
跪いて渡すもんじゃないのかな?」と、
生真面目な顔でじいちゃんが言うから、
3秒ほど沈黙した後、
全員で声を上げて笑ってしまって、
変な緊張感が吹き飛んでくれた。



さて。
本番だ!

と、俺は無意識にネクタイを締め直すようにして、
肩で深呼吸をした。


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