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唐草の微睡み
第4章 甘い沐浴
「去年父が亡くなってから今が好機とばかりに、国境付近に隣国の兵が現れ始めた。
やつらは、常にこの国を狙っている。

この国はしばらく平和だったけど、潜在的にはずっと
隣国の脅威にさらされている。

そんな時なのに国内は、俺が若いのを良いことに、宰相を初めて有力者どもが力をつけ始め、国を私物化しようとしている。
やつらは、互いに足を引っ張り合い、己の利しか考えていない。
正妃にしてもだ。自分の娘を正妃にすれば、俺を操れると思っている。
やつらのうち、誰かの娘を貰えば、宮廷内部の争いをより深刻化させることになるんだ。

今は、国中が団結して、隣国からの脅威に立ち向かわなければならないときだ。
この国の平和を次に繋ぐためにも、今が大切な時なんだ。」

「花凛。お前を妃にすると宣言したとき、当然のことながら宰相達は反対したよ。

でも、俺は…。
俺は、政治的な意味もあったけど、花凛がどうしても欲しかったんだ。

花凛なら…、花凛なら…。
混沌とする宮廷の中でも自分を見失わず、俺の太陽になって俺を照らし続けてくれるって思ったんだ。」

「でも…。まさか、あいつらがこんな手に出るなんて…。
本当にすまなかった…。
もう…もう…俺の妃になってくれとは言わない…。」

「龍星…」

龍星の声が涙で詰まる。

龍星は切れ長の二重瞼の目で空を見つめ、涙がこぼれてこないように耐えていた。

「龍星…。私はこの国が好き。この国をもっと良くしたい。
この国の皆が幸せに暮らせるようにしたい。
昔父と母を亡くして、寂しくて悲しくて…ずっと心から笑えなかった。
そんな私に、龍星は色々な楽しいことを教えてくれた。
武芸や書物…木登りや悪戯だって…。
そうそう、香明にはいっぱいしかられたね。」

花凛の顔から笑みがこぼれる。
つられて、龍星もふふっと笑った。

「龍星が私に心からの笑顔をくれたみたいに、この国の人たちが…
1人でも多くのこの国の人たちが…
心から楽しいって、幸せだって思える国にしたいっていう龍星の気持ち…
その気持ちが痛いほどわかる。」

「龍星…。だって、私もそう思ってるんだもの!
私…私は…龍星と一緒にこの国をもっと良くしたい。」
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