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唐草の微睡み
第1章 はじまりの日
朝の光を浴びながら、1日のうちで中庭の花々が最も美しく輝くその時が、花凛の一番好きな時間だった。

桃の木の根元に腰掛け、書物に目を落としていると、降り注ぐ光が急に遮られ目の前が暗くなった。

「花凛。何読んでるんだ??」

低音の癖のある声が頭の上からして、見上げた花凛の顔を、笑顔の龍星が覗きこんできた。

「えっ?!りゅ、龍星様?!!」

驚いて声がうわずってしまい、思わず花凛は赤面する。


龍星は、水色の涼しげな着物に床まで届きそうな長い羽織を着て、長い髪を無造作に後ろに束ねている。


龍星をこんな近くで見るのは久しぶりだ。
驚きのあまり、口をあんぐりと開けている花凛に、

「花凛。口閉じろよ。」

と言って、龍星はケラケラと笑い出す。

「龍星様!ひどいですっ!!」

花凛はぷうっと膨れっ面をした。

全然変わってない。
昔と同じ龍星に、花凛はなんだか安心した。


ほっとしたのも束の間。
龍星は花凛の膝の上に広げられた書物を拾い上げて、

「はっはっはっ!お前、女のくせにまた兵書なんか読んでるのか?」


龍星の大きな声が庭に響く。
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