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唐草の微睡み
第6章 後宮入り
「斎真。香明は私が幼い頃から身の回りの世話をしてくれたの。香明の同行を許してちょうだい。」

「なりません。花凛様のお世話はこの奥にいるものだけで十分です。」

「か…花凛様…」
香明は哀れなほど狼狽えている。
幼い頃から両親のいなかった花凛の世話をして、花凛のことは目にいれても痛くないほどに大切に思っている。

「お願いよ!」

「なりません。ここではそのような我が儘許されません。後宮に入るもののしきたりでもあります。花凛様ひとりお許しする訳にはいきません。」

「わ…分かったわ…。香明…今までありがとう…。」
花凛は目に涙をいっぱいためて香明を抱き締めた。

「花凛様…っ!!!うっうっ…」
香明は嗚咽をこらえることができない。

「香明…。今までありがとう。私…幸せになるわ。香明もいつまでも元気で…幸せにね…」

「花凛様…花凛様…私の方こそ…花凛様にお使いできて幸せでした。どうぞ、花凛様もお身体に気を付けて…」

「さぁ、花凛様奥へどうぞ。」
斎真が促す。
引き剥がされるようにして花凛は香明から離れさられ、薄暗い奥へと手を引かれて行った。

「…花凛様…うっうっ…」
独り残された香明のすすり泣きが、花凛の耳に長いこと聞こえていた。

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