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第8章 妃になるために

「花凛様。花凛様。」
耳元で呼ばれる声がして花凛が目を開けると、見知らぬ女性が顔を覗きこんでいた。

「えっ？！」
花凛はびっくりして目を覚ます。

「花凛様。おはようございます。花凛様、朝のご準備のお手伝いにまいりました。」

（あぁ。後宮の女官なのね。…はいはい、今起きますよ。）

身体を起こそうとして花凛ははっとして、布団の中に潜り込む。
（私！昨日裸のまま寝ちゃった？！）
そっと布団の中を覗くと、きちんと寝間着を付けていた。
（まさか？！龍星が着せてくれたの？！うそっ！めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないっ！！）
布団の中で顔を赤らめる。

「花凛様？花凛様？どうなさったのですか？」
訝しげな顔で女官が花凛の行動を見つめている。

「い、いえ。なんでもないわ。今起きます。」
花凛は寝台から身体を起こして、朝の準備に取りかかった。


花凛が朝食を取り終えたらころ、斉真がやってきた。
「花凛様。おはようございます。昨日は良く眠れましたかな？」

「おはよう。斉真。ありがとう。良く眠れました。」

「それは何より。さて早速ですが、花凛様のこれからのご予定をお持ち致しました。これから、礼儀作法の講義のあと、我が国の歴史についての講義があります。その後は四書五経の講義、夜は房中術について。よろしいですかな？」

（ぼ、房中術？！うそっ！そんなことまでするの？！）
花凛は恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じた。
房中術とは閨での術のこと、すなわち男と女の営みの技術のことである。

「陛下っ？！こんなに朝早くに！」
急に外で女官たちの声が聞こえて、龍星が花凛の部屋に入ってきた。

「陛下…。おはようございます。」
斉真が深々と頭を下げる。
花凛も遅れて慌てて頭を下げる。
（龍星？！どうしようっ！私、顔赤くない？？）

「花凛、斉真、おはよう。」
今日の龍星はきっちり髷を結い冠を被っている。

「ちょっと寄ってみた。早速、今日から始まるんだよね。斉真、今日はどんなのとをするんだ。」