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唐草の微睡み
第9章 月夜の晩に
「花凛。俺たちって、子供の頃は良く一緒に過ごしたけど、お互い大人になってからは数えるほどしか会ってない。なんか違うんだよ。俺は大人のお前をまだあまり知らないし、花凛も大人の俺をあまり知らない。そこでだ。俺は考えてみたんだ。市井の男女がするみたいに、一緒にどこかに出かけてみよう!」

「は、はぁ……」
なんでそんな考えに至ったのか良くわからない。
花凛は、仕方なくなんとなくな返事をした。

(実感が無いからって、なんでそうなるのよ??ワケわかんない…。まぁ、でもどうしたら実感がわくかなんて私もわかんないから、龍星に付き合ってみるのも良いかな。)

「じゃ、今から行くぞ!」

「えっ?!今から??」

「今からだ!」

「どこに行くのよ。」

「お前、街に行ったことはあるか?」

「街に?!」

「無いだろ!今から行くんだ!」

「えっ?!り、龍星は行ったことあるの?」

「あるよ。たまに遊びに行くのも楽しいぜっ!」

(楽しいぜっ!って……なに考えてるのよっ!この男…薄々気づいてたけど、やっぱりちょっと変…!!)

自分の提案がこれ以上なく楽しみなようで、子供のように目を輝かせて花凛を見つめている。

「ほら!行くぞっ!花凛はこれに着替えろ!」
花凛に可愛らしい水色の衣装を手渡す。
それは、花凛が普段宮廷で来ているような裾の長い衣装では無く、歩きやすいように踝くらいまでの長に裾を切り、派手な刺繍なども施されていない、すっきりとしたものだった。

(こんなのどこで手に入れてきたのよ…?)
花凛は呆れ顔で受け取る。

「俺はこれだ!」
龍星は紺色の商人風の衣装を取り出す。

「すぐに着替えろ。俺はここで着替えるから、お前は寝室で着替えてこい。」

(なんでそんなに命令口調…?)
花凛は、呆れながら寝室に入って行った。
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