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唐草の微睡み
第9章 月夜の晩に
「遅くに申し訳ない。誰かいるか?」
龍星が寺の奥に向かって声を掛けると、

「はい?どなたでしょうか?」
若い僧侶が奥から出てきてくれた。

「日観(ニッカン)様はいらっしゃる?」

「は?日観様でしょうか?あの…どなた様でしょうか?」
夜遅くの来訪者に不信の目を向ける。

「龍星が来たって言って取り次いでよ。」

「はっ…龍星が…と…」
若い僧が見るところ、年のころは自分とそんなに変わらないのに、やけに上からものを言う。
服装などを見ると街の商人といったところだが、なにやら気品のある顔立ちだ。

追い返そうかと思ったが、一応はと思い直し、

「では、こちらでお待ちください。」
ムッとした顔で答えて、奥に引っ込んだ。




この寺の主、日観和尚は自室で書物を広げているところだった。
八十近い年齢ではあったが、この国にその人ありと言われた博識の人物で、実は龍星も昔この老人から学問の手ほどきを受けていたのだ。

「なに?!龍星様が?!!」
と、慌てた様子で、すぐに机のものを片付けはじめ、
「すぐにお通ししなさい!」

日観のただ事ではない態度に、取次の若い僧も驚いて、
「あの?龍星とは、何者なんです?」
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