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唐草の微睡み
第9章 月夜の晩に
「花凛。こっちだ。足元に気を付けろ。」


東屋の屋根は月の光を受けて、微かに発光しているようだった。

東屋の前に、小さな提灯の明かりが見える。


「誰かそこにいるのか?」
龍星が聞くと、

「陛下。お待ち申し上げておりました。」
と、先ほどの若い僧の声がした。


「どうしたんだ?」

「日観様のお申し付けで、ささやかですが中で酒肴のご準備をさせていただきました。ごゆるりとお楽しみください。」

と言って、お辞儀をしたら龍星たちが来た道を逆に帰っていった。

若い僧の姿が見えなくのを待って、龍星が笑い出す。
「はっはっはっ。日観様、やけに気が付くお人だな。」

「本当に。うふふっ。」

と、2人で笑い合って東屋の中に入った。


中は長椅子が2つと小さな机が1つ置いてあるだけで、若い僧の言ったとおり、机の上には酒肴が用意されていた。

2人は隣り合って腰掛け、花凛は龍星に杯をすすめる。

「どうぞ。」

「ありがとう。」

「お前も飲め。」

「いただきます。」

2人で軽く杯を掲げてから、口を付ける。


花凛も龍星も、その動作がなんだか自然で、それが不思議と心地よかった。

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