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唐草の微睡み
第2章 その夜に
その夜、花凛の部屋から、遅くまで明かりの消えることは無かった。

「花凛様!おめでとうございます!」
「香明(コウメイ)!全然、嬉しくないっ!」

興奮気味に頬を上気さながら部屋に入ってきた女性の顔を睨み付ける。

「まぁ。まぁ。」

花凛付きになってもう何年にもなる女官の香明は少しだけ驚いた様子を見せて、後は何も言わずいつも通り、寝る前の花凛の身支度を手伝いはじめた。

朝、龍星が帰った後、すぐに使者が来た。
明日にでも後宮に入るようにとのことだった。


日々の生活に必要なもの、衣装や装飾品、花凛の世話する女官たちは、すべて後宮で整えてあるとのこと、あえて準備する必要もほとんどなかったが、
花凛には大切な書物がかなりの数あり、それを荷造りするだけで、かなりの大仕事だった。


「花凛様。龍星様は、昔から貴女の事が大切で大切でしょうがなかったんですよ。」


「私も今日までは大切な兄だと思ってきました!」

ぶすっと、そっぽを向いて花凛が答える。

「そういう意味ではなくて。」
香明はため息をつきながら、

「龍星様は花凛様のことを深く愛しておいでですよ。」

「私も兄として愛しているわ。」

「もう!素直になってください。実の兄妹では無いのですから。男女の中のこと、どうなるかは分からないものですよ。花凛様も龍星様のことを憎からず思っているのですから、良いではありませんか?」


「それに。今日は嫌な噂を聞いてきました。龍星様が花凛様を妃に迎えることを、宰相はあまり良く思っていないそうですよ。それを、無理矢理押し通したのは龍星様だとか。」

「そうね。宰相には年頃の娘がいるものね。」
興味なさげに花凛は答える。

「宰相の娘が后になれば良いのに。」

「花凛様!いい加減になさいませ!宰相の娘なんかが妃になっては、ますます宰相の力が強くなってしまいます!貴女はきちんと分かってらっしゃるのに!わざとそう言うことを口に出して!」
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