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あの海の果てまでも
第1章 運命の舟
礼也は暁にとって絶対的な太陽のような存在だ。
暁の窮地を救い、更に自分を縣家に引き取り、最高の教育を与え、育ててくれた優しい兄…。
礼也が居なかったら、今頃暁はこの世に存在していないかもしれない。

恩人であり、自分に輝かしい人生を与えてくれたひと。
美しく強く優しく頼もしい、特別なひと。
言葉に言い表せないくらいに、大好きなひと。

…そのひとは今、どれだけ自分に失望していることだろうか。
弟が自分の親友と、駆け落ちしてしまったのだ。
…同性同士の道行き…。
縣家は、前代未聞のスキャンダルに晒されているのではないだろうか。

…兄さん…。

苦しい想いに心を震わせている暁の手が、温かく握り締められた。

はっと貌を上げると、隣席の大紋が優しく微笑んでいた。

…そうして、はっきりとテーブルに着いている全員に聞こえるように、毅然として言い放ったのだ。

「申し訳ありません。Mr.ブライアン。
夜のダンスパーティーでお嬢様と踊ることは出来ません。
…彼が私の大切な、最愛の恋人だからです」



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