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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
絢子が華族女学校ではなく、私学のまだ歴史の新しい星南女学院に入学したのには訳があった。

絢子には二人少し歳の離れた姉たちがいる。
二人とも華族女学校を首席で卒業し、才色兼備と誉れ高く、年頃になると華族新聞に毎週掲載されるほどの、上流階級でも指折りの人気を博した令嬢であった。
そうして二人とも西坊城家より遥かに位の高い貴族の元に望まれて嫁いでいった。

絢子は子爵夫妻がかなり歳を経て生まれた末っ子で、両親は溺愛と言っても良いほどに可愛がっていた。
幼少期、少し胸を患ったこともあり、同い年の子女に比べて小柄で体力もなかった。
初等科は通わせずに自宅で家庭教師を招き、学習させていた。

夫人はこのまま姉と同じ華族女学校に入学させることを心配した。
「絢子さんは姉様方のように闊達に通うことは出来ますまい。
小柄で大人しいことで揶揄われたりしますまいか」
と。

西坊城子爵は国務大臣を何期も務めたこともある賢堅な実力派で立派な人物だが、華族の位としては決して高くはなかった。

…華族女学校では何より生家の貴族の位がそのままクラスのヒエラルキーとなる。
勝気で活発だった姉達とは異なり、おとなしやかで気の弱い絢子が、傲慢な級友たちに虐められるのではないかとの夫人の危惧は尤もに思えた。
子爵も同感だった。

…ちょうどその頃、子爵の旧友が新設の私学・星南女学院という学校の理事長に就任した。
学校の評判を聞くと、先に設立されていた名門・星南学院という男子校と兄妹校にあたり、英国教会の流れを汲むカソリックの学校で、貴族の子女と富裕層の平民の子女が半々の自由で明るい校風だと言う。
しがらみなど何もない新しい学校は絢子にとって居心地が良いのではないかと、強く勧められたのだ。

絢子が通っている日曜日学校の英国人のシスターが学院の主任を務めていると言うのも心強かった。
絢子はその優しいシスターにことのほか懐いていたのだ。

そこで絢子は入学試験を受け、見事合格し、まだ日本では珍しい英国のエドワード様式の意匠が凝らされた煉瓦造りの校舎の門扉を潜ったのだ。



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