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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
スタートラインに並ぶ騎乗の選手たち。
…招待選手なのか、中には外国人もいるようだ。
さまざまな馬が居並び、その上に選手たちが騎乗しているので、見上げるほどに高い。
「一番手前の背の高い選手がお兄様よ」

「…あ…」
絢子は息を呑んだ。
雪子の兄は、一目で分かった。
白馬に跨った上背の高い男。
彼は黒い乗馬帽の下、理知的で精悍な瞳で前を見据えていた。
鼻筋は高く整い、口唇は意思的に結ばれている。
形の良い顎はとても男らしい。
競技用の黒いジャケットに包まれた肩はがっしりと広く、その下の白く上質なシャツの胸元は分厚く逞しい男の身体を表していた。
白い乗馬ズボンに包まれた脚はすらりと伸びている。
特に膝から下、黒革の乗馬ブーツを履いた脚が西洋人のように長く、馬の鎧に添えられていた。

…なんて…なんて美しい方なんだろう…。
まるで、幼い頃に読んだお伽話の王子様みたい…。

絢子は声も出ないほどに驚き、ぼんやりとその男性を見つめていた。

「なかなかイイ男でしょう?
お兄様は結構モテるのよ」
雪子がやや自慢げに笑う。

「…お美しいわ…」
彼に魅入られたように、呟く。

雪子が眼を見張る。
「あら、絢子さん。
お気に召したかしら?」

「…お兄様…お名前は?」

「春馬よ。春の馬と書くの。
だから馬が大好きなのよ」

「…春馬さま…」
…口に出すだけで、胸が締め付けられる。
涙ぐみたくなる。
こんな気持ちは生まれて初めてだ。
この気持ちが何なのかすら、絢子にはまだ分からない。

…春馬さま…春馬さま…。
なんてお美しいお名前なんだろう…。

まるで美しい音楽のように、絢子の胸に響き渡る。

「…春馬さま…」
こんなにも愛おしい名前があるのだろうか…。

競技スタートのフラッグが振られる。

「始まったわ!」
雪子が叫ぶ。

観客たちの歓声が一気に盛り上がる。
競技者の馬たちは、一斉にレーンへと駆け出した。




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