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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
菫色のリボンは、無常にも高い枝に絡まってしまった。
ひらひらと風に靡くそれを見上げ、絢子は自分の不手際に激しく落ち込んだ。

…ちゃんとばあやに結んでもらったはずなのに…。
乳母のフクは最近、神経痛で手が痛いと零していた。
だからしっかりとリボンが結べなかったのかもしれない。
それに気づかなかった自分が情けない。
何より、この雄々しく堂々とした美しい男にそれを目撃されたことが恥ずかしい。
絢子は居た堪れずに声も出せなかった。
…恥ずかしい…。
もう、消えてしまいたいわ…。

「おやおや、随分悪戯な旋風が吹いたものだね。
麗しき乙女の髪からリボンを奪うとは」
朗らかに微笑う春馬の貌を見上げることもできない。

「あ〜あ…。あんなに高いとこに…。
私たちでは取れないわ。
お兄様、取って差し上げてよ」

雪子の提案に、絢子は狼狽して首を振る。
「と、とんでもございません!
そんな…春馬様のお手を煩わせるわけには…」

「大丈夫よ。お兄様は伊達にお背が高いのですもの。
これくらいお茶の子さいさい…だわよね?」
面白がってけしかける雪子に、絢子は眼を見張る。
…兄妹の気安い会話になれていないので、こんなにずけずけと兄に向かって話す雪子にひたすら驚いたのだ。

「…やれやれ。
じゃじゃ馬な妹を持つと苦労するなあ」
と、芝居がかったように肩を竦めて見せ

「絢子さん。リボンが汚れてもご容赦くださいね」
と、温かな目配せをしてみせた。

「…ええ…もちろん…」

しどろもどろな絢子を尻目に、春馬は素早くジャンプして長い腕を枝に伸ばした。

「…あ…」
…男の指先が、ふわりと風に舞う絢子のリボンに触れた。
瞬間、まるで自分に触れられたかのように身体が熱くなった。

「あ!取れたわ!」
雪子のはしゃいだ声が響く。

春馬は高く跳躍し、しなやかな動きで枝に絡まった菫色のリボンをいとも容易く取ってみせたのだ。


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