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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
乗馬倶楽部の離れにある欧州のバンガローを彷彿させる造りのカフェに、春馬は程なくして現れた。

…正装の乗馬服から、濃いベージュの細かな格子柄のツイードのジャケット、象牙色のシャツ、ココア色のレジメンタルタイ、同系色のスラックスという洒落た服装は群を抜いて洗練されていて、人目をとても惹いていた。

春馬は入り口からさまざまな人々に声を掛けられ握手を求められ、それに人好きのする朗らかな笑みを浮かべながら応えていた。
それは男の交友関係の広さ、友人の豊かさを物語っていた。
…中には、妙齢の女性や婦人たちも彼に熱い眼差しを向けたり、耳打ちしたりと、高揚した雰囲気は如実に伝わってきた。

挨拶を交わしながら、春馬はゆっくりと雪子と絢子の座っているテーブル席に近づいてきた。

「お兄様!遅いわ!
待ちくたびれたわ」

雪子が口を尖らせながらずけずけと文句を言う。
兄とは言え、年長の男性にやや乱暴な口を聞く雪子に絢子はやはり慣れない。
きっと、大紋家はそれが許される自由でおおらかな家風なのだろう。
大紋家は貴族ではないが代々法曹界で活躍し、古くは将軍家のご典医まで務めた由緒正しき家柄だそうだ。
ハイカラで教育に力を入れる家風らしく、春馬は英国に留学しているし、雪子も欧州に遊学している。

絢子の家はそう大きくはないが貴族の家柄で、しかも父親は何度も大臣を務めたこともあり、礼儀作法や行儀作法には滅法厳しかった。
姉たちはそれでも
「あら、絢子さんにはお父様やお母様はベタ甘よ。
私たちには本当にお厳しかったもの」
と口を揃えて言うのだが…。

そんなことを考えている絢子の前に春馬は静かに佇み、微笑んだ。
…馬場にいる時とは異なり、きちんと撫でつけられた黒髪は艶やかで、一筋はらりと額にかかっているのが成熟した男の魅力を醸し出していた。

「お待たせいたしました。
絢子さん」

…涼やかな理知的な瞳が細められる。
その笑顔は余りにも眩しく端正で、絢子はただ息を詰めるばかりだった。


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