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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
そのあと、三人は和やかにお茶の時間を過ごした。
春馬ははにかみ屋の絢子に程よい距離感で話しかけ、始終優しく穏やかに接してくれた。

また、絢子が好みそうな話題…最近流行っている浅草オペラ歌手の話や海外文学の話、西洋音楽や西洋美術の話などを堅苦しくない親しみやすい視点から愉しげに話してくれた。

口下手な絢子がぎこちない返答しかできなくても、彼は全く気にする様子もなく、大変聞き上手にゆったりと見守ってくれていた。

…初対面の男性とこんなに楽しく話せるなんて…。
絢子は高揚しながらも、幸せを噛み締めていた。

…でも、春馬様には恋人がおられるのだわ…。

思い起こし切なくなる。

…もっとも、恋人がいらっしゃらなくても、私なんてお相手にもしてくださらないだろうけれど…。
そう自分に言い聞かせる。

ふと話題が途切れ、雪子が思い付いたように声を上げた。

「あ、そうだわ。お兄様!
週末のホテル・カザマの夜会に暁様はいらっしゃるかしら?」

ソーサーから珈琲カップを取り上げようとする春馬の手が一瞬止まった。


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