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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
「やったあ!
お願いよ、お兄様。必ず暁様をお誘いしてよ」
雪子は手を叩いて喜んだ。
…そして、驚いたことにそのまま絢子を振り向き、絢子の手を握り締めたのだ。

「ねえ、絢子さんもご一緒に行きましょうよ。夜会に。
絢子さんとご一緒なら私も楽しいわ。
それに、暁様をご紹介したいのよ」

絢子は驚いた。
「え?
そんな…。でも…我が家にご招待状が届いているか、分からないわ」
「うちに来ているんだもの、西坊城子爵家に届いていないわけないわよ。
お父様は内務大臣様でしょう?
もしご招待されてなくても、絢子さんの1人や2人潜り込ませて下さるわよ。
私のご学友と言えば、どうぞどうぞよ。
美少女が2人も夜会の花に加わるのよ。
逆にお礼を言われるわよ」

「…お前なあ…。
絢子さんが困っていらっしゃるじゃないか。
いい加減にしなさい」
春馬が諫める。

…ホテル・カザマの夜会…。
家に帰り、招待状の有無は執事に尋ねればすぐに分かるだろう。
いや、多分招待状は届いているはずだ。
なぜならホテル・カザマは両親が贔屓にしている常宿だからだ。
雪子の言う様に、間違いなく招待されているだろう。
社交界デビューしたばかりの自分も招待されているかは分からないが…。

…けれど…

絢子は胸の高鳴りを抑えつつ、口を開いた。

「…あの…私…帰宅しましたら執事に聞いてみます」

「本当に⁈嬉しい!絢子さん!」
雪子が飛び上がらんばかりに喜ぶ。

春馬が意外そうに絢子を見た。
「絢子さん。
雪子の我儘にお付き合いいただくことはないのですよ」

「いいえ」
絢子は生まれて初めて男の眼を真っ直ぐに見つめた。
そうして、小さな声だが自分の意思をはっきりと伝えた。

「…私が、夜会にゆきたいのです」

…貴方にお逢いしたいから…。

その言葉は、心の中でのみ呟いたのだ…。


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